少し前なら耳慣れない言葉ですが、最近「老後破産」や「下流老人」という言葉をよく耳にします。
下流老人とは、NPO法人ほっとプラス代表で社会福祉士の藤田孝典さんが作った造語で、同氏の著書名から来ているものです。
藤田さんによる定義だと、『生活保護基準相当で暮らす高齢者およびそのおそれがある高齢者』を指すのだそうです。
一方の老後破産は、老後に貯蓄が底をついたり、生活することが精いっぱいだったり、
もしくは負債を抱えたりすることですが、誰しも「まさか自分はならない」と思っていることでしょう。
老人に限らず、大学奨学金の返済や、予期せず父親の会社が倒産、親の病気などで若者の貧困も問題になっている昨今です。
「うちの子供たちは大丈夫!」と思っていても、
将来私たち世代が金銭的に傾いていけば、おのずと子どもたちも貧困予備軍になってしまうのです。
目の前に自分たちの親の介護が迫っているかもしれない主婦世代ですが、
親のために、自分たちのために、そして子供たちのために何ができるのでしょうか。
Contents
老後破産や下流老人になってしまう原因とは
言うまでもありませんが、老後や老人に限らず、収入より支出が多ければ赤字になり、生活は厳しくなってきます。
まずは家庭の収入と支出を把握することが肝心です。
そのうえで月々の支出を見直しましょう。
保険の見直しや先日紹介した「格安スマホへの乗り換え」も、目に見えて支出が減るかもしれないひとつの手です。
実際、家計の収入には
・給与・預金などの利子・株式などの配当・児童手当など公的な補助
・退職金・満期保険金・年金
支出には
・住居費・食費・水道高熱費・通信費・保険料・日用品
・医療費・教育費・被服費・交際費・娯楽費・交通費
・嗜好品・自動車関連・お小遣い
などがあります。
戸建て持ち家でも必要な住居費
一戸建てで住宅ローンも家賃もない、という人もいるかもしれませんが、戸建ては戸建てなりのメンテナンスが必要です。
台風などの自然災害でダメージを受けて急に補修する必要が出てくる場合もあり、日ごろ住居費の支出はゼロといっても、蓄えておく必要があります。
ちなみに、わが実家のリフォームにかかった費用をご紹介します。
地元の工務店で数年に渡り1か所ずつやりましたので、一度にかかった費用ではありません。
建物形状や地域、相場などにもよりますし、高い安いは一概には言えませんが、参考にしてみてください。
築35年 約50坪の木造2階建て 60代後半夫婦2人暮らし
トイレリフォーム(1か所) 約40万円 |
リフォームしなかったら住めない状態だったというわけではありませんが、
水まわりは大掛かりに改修してバリアフリー仕様になり、IHキッチンにもなって以前より安心して暮らしています。
快適に安全に暮らしていくためには、年齢に応じて戸建ても手を加えていかないといけないのです。
年金っていくらくらいもらえるの?
(日本年金機構ホームページより)
支出項目が多いことや、住居費も思いのほかかかりそう、ということはわかりましたが、
実際に老後の収入のメインとなる年金はきちんともらえるのでしょうか。
私たち主婦が年金を納めるようになったころから、
「年金なんて払うよりもらうのは少ない。あてにならない」などと言われてきました。
実際に自分がいくらもらえるか、知っている人は多くないかもしれません。
日本年金機構のホームページ内にある「ねんきんネット」で、将来受け取れる年金見込み額が試算できます。
(日本年金機構ホームページより)
実際、老後の収支ってどんな感じなの?
自分たちのもらえる年金がどの程度かわかったら、現在の収入と比べてみましょう。
「年金が支給されるころは子供も独立してるはずだし、夫婦2人暮らしだから大丈夫」と言えるでしょうか?
下は、総務省が高齢夫婦無職世帯の家計収支を調べたグラフです(2015年)。
※高齢夫婦無職世帯とは、夫65歳以上、妻60歳以上のみの無職世帯である
※図中の「社会保障給付」及び「その他」の割合(%)は、実収入に占める割合である
※図中の「食料」から「その他の消費支出」までの割合は、消費支出に占める割合である
出典:「家計調査結果」総務省統計局より
図の中にある非消費支出とは、消費支出以外の支出、つまり税金などと考えてください。
盗難などもこの中に入りますので、万が一振り込め詐欺に遭うと、ここが伸びてしまいます。
図でも黒く暗い感じになっていますが、年金などの収入に対して支出が多く、不足分が6万円以上出ています。
この部分はいわゆる「貯金を切り崩して」補うことになります。
しかし、貯蓄がない場合はどうでしょうか。あってもいつか底をつくかもしれません。
3年前ですが、神奈川県大和市長が「60歳代を高齢者と言わない宣言」をしました。
当時は行政がわざわざ宣言した、と一部でニュースになりました。
60歳代は優先席に座るな、というわけではありません。
もっと元気に活躍してほしいという意味だそうです。
たしかに今の60歳代は高齢者と呼べないくらい元気な方も多いですし、平均寿命までにはまだまだあります。
この帯グラフで対象となっているのもそういった元気な方かもしれませんが、
無職世帯を想定しており、支出が多くなってしまっています。
それまでに貯金を切り崩していけるだけの蓄え、備えが必要なのです。
それがないと老後破産、下流老人となってしまうのです。
老後破産しないためのコツコツ対策
現在子育て中というご家庭は、支出を減らしたくてもなかなか減らせないのが現状だと思います。
おかずを一品減らすように、習い事を1つ減らすというわけにはいきません。
どんどんサイズアウトする服を子どもに着させ続けるわけにもいきません。
ではどうしたらよいのでしょうか?
パートに出る、再就職するという方法もありますが、もう働いている主婦の方も多いと思いますので、
ここでは払うべき税金をなるべく減らし、そして資産を増やす方法を考えます。
個人確定型拠出年金
今年から専業主婦もできるようになった節税対策が「個人確定型拠出年金(個人型DC)」、通称iDeCo(イデコ)と呼ばれるもの。
通常もらうことのできる年金に加え、現在から積み立てていき60歳になったら受けとることのできる私的年金(自分年金)のことです。
ただ積み立てるだけでなく、積立金で運用ができるので、運用で得た利益も60歳の時点で受け取ることが可能です。
さらに掛け金の全額や運用益に課税がされないので、一般口座で行う投資より節税になります。
(国民年金基金連合会ホームページより)
イデコが主婦におススメな点は始めやすさです。
イデコは月々5000円から積み立てが可能。
そこから1000円単位で自由に設定できるので、専業主婦の方でも気軽に始めることができる金額と言えます。
注意したいのは、
「老後にお金が必要だから!」
と、今ある程度の資金があるからといって、無理してたくさんかけるのはおすすめしません。
イデコの掛け金や運用益は、年金にプラスして老後に備えることが目的なので、60歳になるまで引き出せません。
ですので手元に残す分が少なすぎると、
事故や病気、災害、子供の教育費や親の介護など、
急にまとまった現金が必要となる事態になった場合に対応できなくなることも。
無理のない範囲で始めることが肝心です。
イデコを始めるには、金融機関で口座を開設します。
金融機関によって手数料や運用できる商品(金融商品)が異なるので気を付けましょう。
投資・NISA
イデコも投資のひとつと言えるかもしれませんが、目的は老後の資金を蓄えることなので、60歳になるまで引き出せません。
今ある資金で行い、必要なときにいつでも引き出せるものが投資です。
ネット証券などで口座を開設し、株式やバランス型など初心者向けの金融商品を購入して運用します。
通常の口座で取引を行うので、得た利益には課税されるため節税というより「増やす」のが目的です。
最近話題のNISAも投資方法のひとつです。
NISA口座で運用した利益は、年間120万円までの投資については通常の口座で運用し、得た利益と違って課税されません。
節税しながら増やす方法と言えます。
現状では2023年までの制度となっているNISA。
始めるなら早い方がおススメです。
ただし、投資にはリスクも伴います。必ずしも元手が増えるとは限りません。
ふるさと納税
以前、主婦へえでも紹介した「ふるさと納税」。
自治体を選んで納税(寄附)することで、さまざまな返礼品がもらえます。
返礼品から選ぶことも、納税額(寄付額)から選ぶこともでき、ふるさと納税した分は節税にもなります。
詳しくは『「ふるさと納税」を急いでやった方がいいらしい理由』を読んでみてください。
まとめ~老後を想像してみるだけでも
誰しも夫婦で年金を受けとって生活する老後を想像していますが、実際、そのときパートナーはいるでしょうか。
逆に自分が先に逝き、パートナーが残される場合もあります。
どちらかだけになれば、当然、相手分の年金はもらえなくなります。
1人になったといっても家賃は半分にはなりませんし、電気を付けている時間も大して減りません。
食費は一人分で作るとかえって高くなることは、主婦の方なら誰でもわかっていることだと思います。
親が一人になったら、介護が必要になったら、私たちはどうしたらよいでしょうか?
そして自分たちの老後はどうでしょうか?
自分の老後より前に子どもが大学を出るのにいくらかかるのか、就職しても収入がそれほど多くなければ援助が必要なのか、
あまり考えたくないことですが、考えてみるのと考えないのとでは結果が大きく変わると思います。
いつ起こるかわからない自然災害や、よその国の大統領が変わることでも、私たちの生活は影響を受けます。
まずは現状を把握すること、そしてできることは何か想像してみること。
ご主人と、ご両親と、子どもも大きければ一緒に考えてみてもらいたいと思います。
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