
kope
専門雑誌編集者を経て、2人めの出産を機にフリーエディターに。フラと校正が趣味。字を書くこと、人と話すこと、コーヒーが好き。
暑い暑いと思っていましたが、気が付けば空も秋らしくなり、部屋に差し込む日差しも深くなってきました。
新学期が始まるとすぐ運動会の練習という学校も多いと思います。
運動会といえば大人も子どもも楽しみなものですが、
「子どもが毎年同じメンバーでのかけっこで最下位から脱出できない」
「秋の運動会は、練習期間の残暑が厳しくて心配」
「長雨や台風で開催日が順延し、お弁当を何度も作るのが面倒」
「早朝からの場所取りが憂鬱」
「延期になったら下の子の幼稚園と運動会日程が重なりそうで心配」
など、実際は気の重くなることもあります。
楽しいことばかりではない昨今の運動会事情ですが、それではもったいない!
親子で運動会が楽しみになる絵本を選びました。
初めて園や小学校で運動会を迎えるお子さんもワクワクする絵本もあります。
9~10月の読み聞かせにもピッタリです。ぜひ読んでみてください。
Contents
<運動会が楽しみになる絵本8選>
かこさとしさんの名作絵本シリーズ
『どろぼうがっこう だいうんどうかい』
(偕成社公式サイトより)
偕成社
作・絵 かこさとし
どろぼうがっこうは、その名の通り、生徒全員がどろぼう。
今年は全員刑務所から出所(!)したことでにぎやかに開催されます。 競技も独特で、「にせさつわたし」は速さだけでなく、本物のお札がまざっていないか確かめる緻密さも必要。見学の村人も大盛り上がりです。 運動会や一般のマラソン大会、スポーツ大会などでも競技中に気になるのが貴重品の管理。カバン持っては走れませんし、着替えや荷物を置いた控室は人がいません。 不用心ですよね。 どろぼうがっこうのセキュリティはどうなっているのでしょうか? 大団円のエンディングですが、どろぼうがっこうの校歌を聴くといいのか悪いのか。でもほっこりします。 |
運動会のさかさ言葉を集めた楽しい絵本
『さかさことばでうんどうかい』
(福音館書店公式サイトより)
福音館書店
作・西村敏雄
小学生はいつの時代もダジャレやなぞなぞ、逆さ言葉などが大好きです。
読むと言葉が変化していき、「あれ?」っとなるところが大人気の『へんしんトンネル』が読み聞かせで大ウケするのも、単純で分かりやすい点が子どもたちに受け入れられているのだと思います。 『さかさことばでうんどうかい』は、運動会がテーマの逆さ言葉ばかりで構成されています。 運動会だけでこんなに多くのさかさことばが思いつく西村さんはすごい!と感心します。 途中、お弁当タイムの昼休みがテーマ逆さ言葉もありますが、読んでいる大人は「これは強引だなぁ」と、クスっと笑ってしまいます。 作者の西村敏雄さんは『バルバルさん』『もりのおふろ』などでもおなじみで、油絵のような温かみのある色彩の絵が素敵です。 『うんこ』という絵本も手がけています。チェックしてみてください。 |
かけっこが苦手な子に読んでほしい、きむらゆういちさんの運動会絵本
『うんどうかいがなんだ!』
(新日本出版社公式サイトより)
新日本出版社
さく・きむらゆういち
え・大木あきこ
全員で踊るダンスが恥ずかしい子、足が遅くていつも徒競走が最下位の子など、運動会が楽しみではない子もいると思います。
『うんどうかいがなんだ』のブブタンも運動会が嫌いな子の一人です(ブタですが)。 運動会が雨ならいいのにと願います。 いっそ休もうかと思ったら、ビリを争うポンスケに休むなと言われ…。 運動にしてもテストにしても、ずるいとは思いつつ、子どもなりに「あの子がいれば自分はビリにはならない」と心のどこかで安心することがあります。 そう思って努力しないでやりすごすかどうか。 根性論というか精神論のような話ですが、ブブタンとポンスケの行動を通じてわかりやすく描かれています。 |
タリーズコーヒー絵本アワード特別賞受賞の一冊
『おもしろうんどうかい』
(登竜門より)
タリーズコーヒージャパン
作・おくやまゆか
タリーズコーヒーに行かれたことのある方はご存知だと思いますが、タリーズコーヒーにはカウンターに何冊か絵本が並んでいます。
ミスタードーナツやモスバーガーなど、ファストフード店などでも店舗によってはサービスで子ども向けに絵本やおもちゃを置いてあるところもあります。 しかし、タリーズコーヒーは独自の絵本が置かれているのです。 2003年から始まり、現在第16回めの作品を募集中なのが【タリーズピクチャーアワード】。絵本作家の発掘・支援を目的に始められたプロジェクトです。 その第7回で特別賞を受賞したのが『おもしろうんどうかい』です。 運動会といえば、色別にチームが分かれ競うもの。 この本でも4色のチームカラーに分かれてさまざまな競技が行われています。 どの子がどの競技に出ていたかを探す楽しい仕掛けも。 「ああ おもしろかった!」と思える運動会をどの子も体験できますように。 |
雨が降るとくやしくて泣いてしまいそうな子に読んでほしい絵本
『あめがふってよかったね』
佼成出版社
作・よしいたかこ
絵・石倉ヒロユキ
練習に練習を重ねてのぞむ運動会当日は晴れてほしいもの。
お弁当を作るお母さん方も「一発で晴れてほしい」と思いますよね。 けんちゃんも一生懸命かけっこの練習をしたので、明日の幼稚園の運動会は晴れてほしいと思っています。 雨に向かって「あめ、やめー!」と叫んでいると、「あめ、ふれ!」と叫ぶ声が聞こえます。 運動会なのに雨が降ってほしいと願っているのは誰でしょう? 雨だからこそ運動会ができる生き物もいます。 実際に雨が降っても、けんちゃんはふてくされたりしません。 雨が降って延期になり、がっかりしている子がいたら、ある生き物が「運動会しているかもね」と話してあげたらいいなと思いました。 難しく言えば他者理解となるのでしょうか。 いろんな立場、いろんな見方があることが、子どもながらに理解できそうです。 ぜひ読んでみてください。 |
とにかくおもしろい!かいけつゾロリの運動会
『かいけつゾロリのようかい大うんどうかい』
(ポプラ社公式サイトより)
ポプラ社
さく・え 原ゆたか
小学生に大人気の読みもの「かいけつゾロリ」シリーズにも運動会をテーマにした一冊があります。
ゾロリが出てくるのですから、普通の運動会のはずがありません。 ひょんなことから妖怪たちと運動会をすることになるのですが、玉入れの玉は火の玉だったり、綱引きの綱がヘビだったり、おもしろい競技が目白押しです。 単におもしろい競技の運動会の話、では終わらず、おとなしい子も運動会の主役になれるかどうかがカギとなります。 ゾロリシリーズのお約束、イシシとノシシのおならや、惚れっぽいゾロリがすぐ好きになってしまうきれいな女性も出てきます。 |
ありがたい仏さまの世界の運動会を垣間見られる絵本
『だいぶつさまのうんどうかい』
(アリス館公式サイトより)
アリス館
ぶん・苅田澄子
え・中川学
お母さん方世代がよく見ていた「ゲゲゲの鬼太郎」のテーマ曲だと、妖怪たちが夜の墓場で運動会をしますが、この絵本では仏さまたちが運動会をしています。
阿弥陀如来さまに弥勒菩薩さまなど各地から雲に乗って集まった仏様たち。千手観音さまの玉入れは最強です。 タイトルの通り、主役の大仏さまですが、今回が初参加。1000年も座っていたのでまず足がしびれて立てません。 こんな大仏さまがどんな競技で活躍できるのか、想像しながら楽しめる一冊です。 ママが行きたい御朱印帳巡りなど、寺社仏閣へはつまらないと言ってついて来てくれない子も、これを読んだら仏さま見たさについて来てくれるようになるのでは?と期待できる、仏さまに親しみを持てる絵柄も素敵です。 |
半端ない運動神経のおばあさんが出てくる運動会の本
『やまんばあさんの大運動会』
(理論社公式サイトより)
理論社
作・富安陽子
絵・大島妙子
以前、主婦へえの【子どもと一緒に涼しくなれる おばけ本13選】のなかでも紹介した「妖怪一家九十九さん」シリーズの富安陽子さん。
「やまんばあさん」シリーズも読みごたえありです。 主人公はドングリ山のてっぺんに住む296歳(!)のやまんばあさん。 富安陽子さんの絵本に出てくる山姥というのは、「まゆとおに やまんばのむすめ まゆのおなはし」(富安陽子・作)もそうですが、今風に言えば、とにかく身体能力が半端ないんですね。 そんなやまんばあさんが運動会(この本では町内運動会です)に出るとなったら、大波乱になること間違いなしです。 当初、来賓として招待されたやまんばあさんですので、正装していますが、運動会の楽しさに我慢できなくなり大活躍します。 「運動会はやっぱり楽しいよなぁ」と、大人も次の運動会が楽しみになる、読後感がとてもさわやかな一冊です。 |
リレー出場を断れないお父さん・お母さんへ運動会前おススメの一冊
『お父さんはなぜ運動会で転ぶのか? いますぐできる運動不足解消メソッド』
(PHP研究所公式サイトより)
PHP新書
辻秀一 著
筆者が昨年度、自治会対抗の運動会に参加したとき、ボール送りくらいは参加するつもりでいたのですが、まさかのリレーに駆り出され、絵にかいたように派手に転びました。
日ごろの運動不足に加えてコンバースでの参加。そりゃあ転びますよね。 今回、運動会が楽しみになる絵本をセレクトしていたところ、この書籍を見つけました。 スポーツドクター・辻秀一氏の著書です。 どうして転ぶのかの理由や転ばないための普段のトレーニング方法ももちろん解説されているのですが、「自分はできないと思うことをやめる」など、ちょっと考えさせられる項も多く、興味深かったです。 走る競技に出て子どもにいいところを見せたいけど不安、嫌だけど毎年リレーに駆り出されるといったお母さん、お父さんにオススメです。 |
運動会が縮小化・時短化になる時代にこそ読んでほしい絵本
最近の小中学校では「組体操禁止」、高校などでも「練習中に熱中症で救急搬送」というニュースが聞かれます。
筆者の子どもが通う小学校は5月末開催の運動会でしたが、練習後に熱中症で搬送された子が数人いました。
曇っていた日だったことや、練習が終わった帰りの会で倒れたことなど、お詫びのお便りを読んで知り、驚きました。
学校は水筒を校庭に持ってこさせ、適度に休憩するなどの対策をしていても起こったようで、怖くもなりました。
組体操も2年前からなくなって旗体操になりました。
我が子が高学年になったときに組体操がなくなっているとは思わず、ちょっと残念なような、安心したような運動会当日。
メガネをかけたまま本気の棒倒しをして転んでいる男子を見たときは「危ない!」と思いました。実際に倒れた子にかぶさったり、転んだりして流血している子もいたようです。
子どもたちは必死にがんばります。
しかし、勝ち負けを意識してムキになることもあります。
運動会はケガと隣り合わせだということを、観戦する大人になってから気が付きました。
また、最近では共働き家庭などに配慮して『午前中のみの運動会』というところも。
先生の負担軽減にもなるようです。
賛否両論ありますが、町民や家族総出で運動会の一日を楽しんだ世代としてはちょっと寂しくもなります。
これから運動会が、学校全体や家庭内でも「暑いなか嫌々練習をするもの」「行事だし、やらなければならないもの」という感覚になっていきそうで残念な気もします。
せめてみんなで身体を動かし、友達を応援する運動会は楽しい、と感じてほしいと思い、今回数冊の本を選びました。図書館や書店で探してみてください。
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